【印刷してみた】Hahnemuhle German Etchingの魅力
芸術大国ドイツ。
400年以上の歴史をもつHahnemuhle Fine Art社(ハーネミューレファインアート社)をなくして欧州の芸術は語れません。
ルネッサンスの絵画やシェイクスピアの作品、グーデンブルグの聖書など、長い年月が経過してもいまだに現存している芸術品は「コットン」をベースにした用紙を使用しているのです。
また時代の変化に伴い、今ではコットンだけでなく「αセルロース」という素材でも用紙が作られ、多くのアーティストを支えています。
コットンやαセルロースで作られた歴史のある用紙を写真・イラストの分野で扱えるのは時代の進化があってこそ。
"PHOTOPRI"オススメの用紙の中でも上位に君臨する、人気のあるハーネミューレシリーズ。
ハーネミューレシリーズはたくさんの用紙種類がありますが"PHOTOPRI"では6種類に厳選しています。
さて、今回の記事では、German Etchingを取り上げます。
「マット紙の印刷をしたことがない。」
「German Etchingの特徴は?」
「どんな写真やイラストに適しているの?」
などのお悩みやご不安を持った方に向けて書かせていただきます。
〈取扱用紙〉
- 【Hahnemuhle】Photo Rag <商品ページへ>
- 【Hahnemuhle】German Etching <商品ページへ>
- 【Hahnemuhle】Torchon <商品ページへ>
- 【Hahnemuhle】FineArt Pearl <商品ページへ>
- 【Hahnemuhle】Photo Rag Baryta <商品ページへ>
- 【Hahnemuhle】Photo Rag Metallic <商品ページへ>
【Hahnemuhle】German Etchingという選択
German Etching(以下、ジャーマンエッチング)は、2023年から採用が決まった用紙です。
この用紙はデジタルプリント版の版画紙といった感じで、用紙の質感がかなり近いです。
以前、銅版画作家さんにジャーマンエッチングで作成した名刺をお渡しした際にも非常に気に入ってもらえましたし、それをきっかけに話も弾み...
という経緯もあり、銅版画作家さんお墨付きの用紙となりました。
ジャーマンエッチングは厚み、コシ、風合い、色表現といった一つひとつの要素が他の用紙と比べても毛色が異なり、写真家、イラストレーターにとって、強い味方となってくれると思います。
手に取ったときの用紙の「剛性」には感動を覚えます。
ジャーマンエッチングを使う上で、いくつかの特徴や注意点をおさえていきたいと思います。
コシと厚みのバランスが良き
ジャーマンエッチングの大きな特徴は「コシの強さ」です。
コシの強さとは、用紙そのものの弾力のようなもので、国内で販売されている用紙でもコシの強さを武器にしている用紙は多数あります。
紙は通常、ペラペラとしていて、ものによっては簡単に折れ曲がってしまうことがありますが、コシの強い用紙では折れ曲がることが少なくなります。
もうひとつの特徴として「厚みがある」という点が挙げられます。
PHOTOPRIで取り扱いのある用紙の中でも、特に厚みのある用紙がジャーマンエッチングです。
厚みがある利点は操作がしやすいということです。
薄い用紙の場合、例えばフレームに入れるときに折り曲げてしまったり、傷を付けてしまったりすることもありますが、そのような不安が少しでも軽くなるのは、安心ですよね。
ジャーマンエッチングは、コシと厚みのバランスがよく、ファインアート紙の中でも徐々に人気が出てきている用紙です。
樹木を感じる面質
「面質」は用紙ごとに大きく異なります。
風合いの良い用紙というのは、この「面質」という要素がキーでもあり、用紙の良し悪しを決める上でも大切です。
風合いの良い用紙といえば、同じハーネミューレから出ているTorchon(トーション)があります。
トーションは水彩画紙のような風合いで、色域も広く、優しい色表現をしてくれる上質な用紙のひとつです。
(上の画像は、面の凹凸がわかりやすいように編集を加えています。)
ジャーマンエッチング(画像左側)は、樹木の表面のような繊細なスジがたくさん入っている感じ。
トーション(画像右側)は、柔らかい波のような面になっていますね。
ジャーマンエッチングのこの面質が、印刷物にも絶妙に効いてきます。
どのようなテイストの作品に合わせやすいか、については後述します。
注意点① 丸めるとき気をつけて
ジャーマンエッチングを扱う上で、棒状に丸めるときは気をつけてください。
私たち自身が普段から注意していることでもありますが、A3サイズ以下の作品を筒状に丸めようとすると折れ曲がってしまうことがあります。
保管する場合は、なるべく太めに巻くか、丸めずにフラットな状態での保管をおすすめします。
注意点② パネル張りには不向き?
ジャーマンエッチングで出力した作品を、木製パネルに貼り付ける場合は注意をしてください。
その理由として、これらが挙げられます。
- 作品の四辺が毛羽立ってしまう
- 用紙の吸湿性があり、貼ったあとにシワが付いたり、反ったりしてしまう
木製パネルでは、張り込んだあとにパネルを裏返し、四辺をカットするという工程を踏むため、かなり慎重に切らないときれいな仕上がりにはなりません。
そうなってしまう可能性として考えられるのは「αセルロースから成る用紙だから」です。
シワや反りについて、これも可能性の話にはなってしまいますが、
用紙のもつ吸湿性が高いから起こってしまうものだと考えられます。
(ジャーマンエッチングの吸湿性については普段から用紙に触れている私たちの経験から、そう感じるというものになってしまいますので話半分に見てください。笑)
明るい色表現を実現
ハーネミューレの用紙は色表現に優れているものがたくさんあります。
特にPhotoRag(フォトラグ)シリーズは諧調豊かで、光沢紙、ファインアート紙ともに大人気です。
ジャーマンエッチングの色表現は、例えばフォトラグと比べるとやや明るめに仕上げるものとなっています。
入稿いただいたデータにもよるので一概には言えませんが、データ上では濃度が高く感じる色だったものが、印刷をしてみるとやや明るめのトーンに仕上がった、ということもあります。
ディスプレイで見たときの色味をドンピシャにしたいという方には注意が必要かもしれません。
マット系用紙に印刷をする場合、色は落ちてしまうのが通常ですので、そういう意味でジャーマンエッチングは、トーンが明るく仕上がるというのは稀有な存在かもしれませんね。
どのような写真・イラストに適しているのか
モノクロ写真や油彩画風、銅版画風のイラスト
ジャーマンエッチングの印刷では、ほとんどの方がイラストでご注文をいただいております。
写真印刷ではジャーマンエッチング以上に採用されやすい人気の用紙が多数ありますので、多くの方は別の用紙を検討されているのではないかと感じています。
そんな中で、あえて言うなら...という視点になってしまいますが、モノクロ写真の印刷は満足いただける仕上がりになるのかなと思います。
特にシルバートーン調の写真は「クール」と「柔らかさ」を適度に両立できるのではないでしょうか。
モノクロ写真にはPhotoRagBaryta(フォトラグバライタ)やプロフォト厚手絹目など、黒の締まりの良い用紙がありますので、競合もたくさん。
イラストとの適正についてですが、油彩画のような濃度の高い作品におすすめできます。
が、ふんわりとした作風のものやキャラクター・アニメ風のものは、ジャーマンエッチングの面質がかえって邪魔をしてしまうのではないか、とも感じています。
濃度の高い色使いがされている作品では是非試していただきたいですね。
また、冒頭にも触れましたが、銅版画テイストの作品の印刷をする場合は非常に合うと思います。
銅版画ならではの、くっきりとした点や線を表現するなら、ジャーマンエッチングの質感とも相まって、本格的な作品になること間違いなしだと思います。
作品のもつ「華」を鑑賞者の目に飛び込ませる作品にしたい、という方にとってジャーマンエッチングは候補のひとつになってくると思いますので、是非一度お試しください!
おまけ
・ジャーマンエッチングは「コットン」ではなく「αセルロース100%」の用紙になります。
・ジャーマンエッチングはハーネミューレの用紙シリーズの中の「マットファインアート」の一角です。
・ジャーマンエッチングについては上述した通りですが「そもそもファインアート紙って何?」という方もいらっしゃると思いますので「ファインアート紙」についてのご説明も加えておきます。少し固い表現もあるかもしれませんがご容赦ください。笑
ファインアート紙とは
ファインアート紙はインクジェットプリント技術の向上により「紙としてのクオリティ」が飛躍した用紙のひとつです。
従来の銀塩写真と同等の高精細、高品質のデジタルイメージの再現が可能になったことで、一気に写真・アート業界でその可能性が検討されたのです。
ファインアート紙の大きな特徴は「保存性」と「風合い」を両立している点です。
原料となるのは「コットン」や「木材」、「竹」などがありますが"PHOTOPRI"で採用しているのはコットンベースのファインアート紙になります。
コットンベースのファインアート紙は、リグニン(木材の20〜30%を占めている成分。木材由来の紙は当然リグニンを含んでいるため、時間が経つと劣化します。ちなみに本が変色するのは紫外線とリグニンの科学反応によるものです)を含んでいないため、長期間の保存が可能になりました。
Hahnemuhle(ハーネミューレ・ドイツ)やPICTORICO(ピクトリコ・日本)、Canson(キャンソン・フランス)など、ファインアート紙のサプライヤーは数多く、それだけに用紙の種類も多岐に渡ります。
今後の可能性としては、ヨーロッパ圏で進化を遂げてきたファインアート紙がさらなる進化を期待されるのと同時に、これからはアジア圏からも新たなファインアート紙が誕生するかもしれません。
ファインアート紙はアート業界の方だけに留まらず、個人のクリエイターの層まで浸透していくと考えられています。それに伴って、用紙自体もさらに種類が増え、細分化していくものになっていく可能性は高いと言えるでしょう。
〈取扱用紙〉
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- 【Hahnemuhle】Photo Rag Metallic <商品ページへ>
【Hahnemuhle】German Etchingをお試し印刷してみませんか?
車を買う時は一度試乗をするように、プリントをする前に、まずはお試し印刷をご利用いただき、ご自身の目で用紙を体験してほしいと思っています。
光沢紙、マット紙、ファインアート紙、和紙など多岐に渡る用紙それぞれがもつ風合いや手触り、色写りなど、実際に印刷物を手にしてみないと分かりませんよね。
たくさんの用紙の中からベストなものを選択しようとしても、いきなりは難しいと思います。どれを選んだら良いのか分からないという方は本当に多いのです。
お試し印刷は、ご自身の写真データを使って出力することができます。
お好みに応じたお試しセットをご用意しておりますので、是非一度ご活用ください!